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【ベルスポ vol.2】コラム Fリーグ湘南ベルマーレ 守護神フィウーザ神セーブ連発! 難攻不落で悲願の初Vを

湘南ベルマーレがGKフィウーザの神セーブ連発+3得点に絡む大活躍で優勝争いの絶対条件となる3位圏内を視野に捉えた好位置で中断期間に入った。2022-2023シーズン、Fリーグディビジョン1第8節が行われた8月27日、湘南はフウガドールすみだに4-1勝利。今季初黒星を喫した嫌な流れを吹き飛ばし、優勝争いの大波に乗った。

「湘南の要塞」。クラブ公式サイトにあるGKフィウーザのキャッチコピーだ。185cm、82kg、ブラジル・ポルト・アレグレ出身のフィウーザは湘南の要塞ぶりをいかんなく発揮し、さらには3得点を演出する活躍でチームの4-1快勝に貢献した。初観戦の前節ホーム浦安戦に続くFリーグ2度目の観戦となったこの日、かつてGK大国で感じた「GKへのリスペクト」を思い出した。

2002-2003シーズンから2006-2007シーズンまでの5年間、イタリア国内サッカーリーグ・セリエAを取材していた。catenaccio(カテナチオ=かんぬき・錠前)の堅守を誇り、1-0勝利の美学が国民に浸透しているイタリアにおいて、最後の砦となるportiere(ポルティエーレ=門番・GK)はリスペクトされている。時間にルーズとの印象もあるイタリア人だが、「calcio(カルチョ=サッカー)の開始時間には厳しい」との冗談がまかり通るほど、calcioが生活の一部になっている。公園や空き地でもcalcioが行われ、年齢や国籍関係なく好きなタイミングでの参加も大歓迎されるイタリア。

即席チームでのポジション決めが、イタリアらしかった。「GKは俺がやる!」との声が上がるほど、花形ポジションとして君臨している。アラフィフ世代として、日本では「GKは誰がやる?」「お前がやれよ」だった。誤解を恐れずに言えば「GKの押し付け合い」だった。なぜか。答えは明白だ。長いcalcioの歴史において、GKに対するリスペクト、憧れのまなざしが根付いており、当時の日本には根付いていなかったからだ。

ディノ・ゾフ、ジャンルカ・パリュウカ、ジャンルイージ・ブッフォン、ジャンルイージ・ドンナルンマ…。我が街のクラブ、そして、azzuri(アッズーリ=青・イタリア代表)がW杯やユーロなどの大舞台で絶体絶命の危機を救う選ばれし一人。勝利をもたらすGKの勇姿がリアルタイムに、そしてVTRで何度も目に焼き付けられる。その繰り返しとともに「花形GKの系譜」が刻まれる。

話は逸れるが、後に日本代表GKとなる川島永嗣のパルマ留学時を思い出す。高卒でJ1大宮入団1年目。クラブ側の期待度の高さか、GK大国イタリアへの短期留学が実現し、当時、イタリア国立ペルージャ外国人大学の学生だった私が通訳を担当した。セリエA優勝を置き土産に、中田英寿がローマからパルマに電撃移籍した2001年夏のことだった。

川島は若手選手が出場する大会にパルマのGKユニフォームを纏い、出場した。ダイヤの原石発掘の場でもある大会で、チームを優勝に導きベストGKに選出された。優勝が決まると、現地記者から「川島は素晴らしい活躍だった。個人的に今大会で最も優れた選手だ」と言われたことを覚えている。川島の活躍は疑う余地もないが、現地メディアにはGKの能力を見極め、そして報じる(報じたがる?)土壌があった。

日本でGKへのイメージが変わったのは1996年アトランタ五輪か。ロナウジーニョ、ジュニーニョ、ロベルト・カルロス、さらにはオーバーエイジのベベット、リバウドら豪華タレント擁する優勝候補大本命ブラジルに1-0勝利した「マイアミの奇跡」。ブラジルの猛攻を神セーブ連発でゴールマウスを死守した川口能活の姿は、当時の日本人が抱くGK像を劇的に変えた瞬間でもあった。

さて、舞台を2022年8月27日の小田原アリーナへ。前後半各20分のFリーグ、2点を追うフウガドールすみだは残り「4分50秒」でパワープレーを仕掛けた。GKユニフォームを着たFP(フィールドプレーヤー)が本職GKの代わりに出場し5人で攻める-。各チーム5選手のフットサルにおいて、FPが一人増えることは、かなりの脅威になる。優勝への絶対条件となるプレーオフ進出の3位圏内へ向け、すみだが「選ばざるを得ないハイリスクハイリターン」の作戦だった。

結論から言うと、すみだの賭けは成功し、そして失敗した。残り3分47秒にすみだは1点を返すが、その後のパワープレー返しで湘南に2点追加を許した。本職GKが不在の中、湘南は残り53秒、GKフィウーザからのスローをFP本田が頭でつなぎ、FP林田が足で合わせて無人のゴールに流し込み3-1。さらに残り30秒、GKフィウーザからのスローをFP内村が頭で合わせて4-1で試合終了。

湘南のチーム2点目、内村のゴールもフィウーザのスローからだった。すみだ最終ラインFPの頭上を越えるボールが敵陣左サイドの内村にピタリと収まり、貴重な追加点が生まれた。残り時間53秒からのダメ押しの2点追加と合わせて、この日のフィウーザは、計27本のシュートを1失点に抑えるだけではなく、3得点に絡む活躍。

正確無比なスローからのゴールラッシュには伏線があった。残り10分6秒とパワープレー突入後の残り2分53秒だ。フィウーザのスローが直接無人のゴールネットを揺らした。ルール上ノーゴールとなったが、パワープレーに備えたフィウーザがスローの感覚を確かめていたようにも映った。

試合後、記者会見室に現れたフィウーザは「今日はとても良かった。みんな気持ち強いね。守備への意識も超強いね」と鉄壁の守備を誇らしげに語った。20m×40mのピッチ上に築かれたFP一丸での総構え、そして城門に君臨し本丸を死守したフィウーザ。この日の夏の陣は、かつての小田原城をほうふつとさせる「難攻不落」を見せつけた湘南に軍配が上がった。

献身的にゴールマウスを死守し、3得点を演出した「湘南の要塞」の無双ぶり。夏休み最後の週末に、GKへのリスペクトを抱いた子どもたちも多かったのではないか。(文中敬称略)

■ベルスポ

BELLMARE SPORTS。Fリーグ湘南ベルマーレの試合結果をはじめ、フットサルに関するコラムなどをスポーツ新聞風にお届け予定。

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taka

イタリア在住10年の経験則で、仕事の終了時間をリスペクトするアラフィフおっさん。慶應義塾大学環境情報学部中退⇒イタリア国立ペルージャ外国人大学留学中にイタリア語通訳などを始める。イタリア最大スポーツ紙La Gazzetta dello Sport翻訳記事@livedoorニュース▶セリエA通信員&記者@日刊スポーツ▶コピーライター&企画&コンテンツマーケティング@広告代理店▶Webディレクター&Web広告&SNSキャンペーン@Web制作会社▶今ここ。趣味はフットサルとたまにする料理。 詳細は「about」ページに 。

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