国内最高峰フットサルリーグ「Fリーグ」2023-24シーズンが5月27日(土)、開幕を迎えた。オープニングゲームは湘南ベルマーレ対エスポラーダ北海道、舞台は湘南のホーム小田原アリーナ。リーグ屈指の攻撃的スタイルを貫く湘南は、昨シーズン終了をもって絶対的エースが退団し、精神的支柱が引退した-。7年間在籍し「湘南の先導者」として上位躍進に導いたブラジル代表FPロドリゴは、新天地タイに活躍の場を移した。そして熱烈サポーターから下部組織を経て、ムードメーカーとしてチームを支えたFP鍛代元気はユニフォームを脱いだ。Fリーグ元年から17年目。下位争いから中位争い、そして上位争いへと変貌を遂げつつある中で、チーム改革を余儀なくされた湘南。悲願の初優勝を狙う湘南の開幕戦を、振り返る。
【取材・構成=taka 湘南ベルマーレフットサルクラブ後援会FAO(Futsal Academy of ODAWARA=ファオ)広報公聴委員会委員長(2023-)、日刊スポーツイタリアセリエA担当(2002-2007)・サンフレッチェ広島担当(2007-2012)】
※2023年5月29日現在の情報です。
ロドリゴ退団も「期待の3選手」がそれぞれ開幕弾の新湘南style
杞憂、だった。Fリーグ2023-24シーズン開幕戦「湘南ベルマーレ対エスポラーダ北海道」は10対3で湘南が大勝した。過去5年で9勝0敗3分と相性の良い北海道が相手とは言え、勝負ごとに絶対はなくシーズン成績を占う重要な一戦。梅雨入り前のこの日、小田原アリーナに詰めかけた1,197人のサポーターは、新シーズン開幕への期待と同時に、ある共通の不安を抱えていたのではないだろうか。
「ロドリゴ退団で得点力は落ちるのでは…」「元気が引退して、誰が盛り上げ役に…」。2016-17シーズンから7年間在籍し、2021-22シーズンにはリーグ得点王の22得点でMVPに輝きクラブ史上最高2位に導き、2022-23シーズンにはFP堀内とともにチーム稼ぎ頭の17得点で得点ランキング2位の「湘南の先導者」ロドリゴが退団。明るいキャラと闘志あふれるプレーでチームを鼓舞した鍛代が引退。転機を余儀なくされて迎えた湘南の「新章」でもあった。
試合は湘南が前半3分37秒、FP本田のFリーグ2023-24シーズン号砲&自身200得点で先制すると、FP牛迫の豪快左足弾で前半を2-0で折り返す。後半開始19秒、FP靏谷の追加弾で3-0に。1点を返されるも、その後はFP内村、靏谷2点目、新人FP前川のデビュー弾、FP堀内のゴールで7-1に。たまらず本職GKを外してGKユニフォームを着用したFP5人による諸刃の剣「パワープレー」に転じた北海道を、本田、堀内、それぞれ自身2点目となる「パワープレー返し」で突き放した。北海道は2点を返すも焼け石に水。最後はFP津田のゴールもあり10-3勝利。開幕カード唯一の二桁得点で、首位発進を飾る上々の船出だった。
開幕戦で今シーズンの湘南styleが、わずかながら垣間見えた。この日の10得点の内訳は、本田、靏谷、堀内が2得点、牛迫、内村、前川、津田が1得点と計7選手で挙げた10点だった。昨シーズン7選手が得点を挙げた試合を調べてみると-。単純に2022-23シーズンで湘南が7点以上記録した試合は第10節バサジィ大分戦(2022年10月30日、小田原アリーナ)での7-1勝利と、第17節エスポラーダ北海道戦(2022年12月17日、小田原アリーナ)での13-2勝利の2試合。
大分戦の得点はロドリゴ、鍛代、オウンゴールでそれぞれ2得点、そして堀内1得点の計3選手。クラブ最多得点記録となった北海道戦はロドリゴ5得点、堀内3得点、本田2得点、そして内村、山﨑、津田が1得点の計6選手。クラブ最多得点記録の13得点の試合で得点者が計6選手だったことを考慮すると、「得点者が7選手」は異例であり、少なくとも昨シーズンは1度も記録していない。
絶対的エース不在で得点力ダウンを心配したサポーターに今シーズンの「湘南style」を披露した開幕戦。上位躍進の鍵を握る3選手が得点はじめ、勝利に貢献したことも大きな収穫だった。開幕直前の5月中旬、伊久間監督インタビュー時の言葉を思い出す。「ロドリゴは不在ですが、出場機会の少なかった若手も主力の自覚が芽生えている。特に萩原、牛迫、靏谷の3人の活躍に期待しているし、3人の活躍が上位進出には欠かせない」。ロドリゴと同じ左利きとして強烈ミドルも狙える牛迫、そして緩急あるドリブル突破からのカットインシュートが得意の靏谷が、それぞれ持ち味を披露し開幕ゴールを奪うと、昨シーズンは負傷に泣いた身長179㎝のFP萩原もFリーグでは稀有な長身ドリブラーとして、また、空中戦でも見せ場を演出するなど攻守に輝きを放った。
そこに実績十分の本田、日本代表でアジア王者メンバーの内村、前川デビュー弾をお膳立てした身長152㎝のFP林田、スピード突破の山﨑、身長184㎝の津田、そしてJリーグ湘南ベルマーレで背番号「10」を背負った新加入FP菊池が、ピッチに躍動する。縦横無尽に、高低差を活かし、そして緩急まで付ける流動的な波状攻撃は、対戦相手としては対策に困難を極めることだろう。さらに、得点率25%を誇るセットプレーに、守っては円熟味を増すばかりのGKフィウーザの無双ぶり。引退した鍛代はクラブコミュニケーターとして潤滑油のように「チームの精神的支柱」を担う、おまけつき。
試合後の記者会見室で伊久間監督に「ロドリゴ不在の中で得点を奪えるのか?との心配の声もありましたが…」と質問をしてみた。指揮官は「僕もそう思ってましたよ…」と笑みを見せると、「(ロドリゴが後継者指名の靍谷)春人も当然研究されてくる中で、どうかいくぐるのか期待している」と語気を強めた。昨シーズンと違い、今シーズンは全12チームがホーム&アウェイの2回戦総当りリーグ戦の上位6チームと下位6チームに分かれて「ファイナルシーズン」に突入する。
ロドリゴというFリーグ歴代屈指のファンタジスタが退団した湘南の船出-。世界のサッカーシーンでも新シーズンに向けて「絶対的エースの不在」は、よくあることだろう。ただ、「絶対的エース不在」で迎えたシーズンに優勝を果たす光景もまた、よくある。この日の開幕戦で、湘南が上位6チーム入りの有力候補から本命候補に、そして悲願の初優勝への有力候補へと浮上したようにも映った。まだ1試合だが20m×40mのキャンバスに描いた鮮やかな波状攻撃は、「小田原に優勝カップを」との想いで観る者に、夢を見させるに値する新たな湘南styleだった。
Fリーグ2023-24シーズン関連情報
■Fリーグ2023-24 ディビジョン1大会概要
【開催期間】 2023年5月27日(土)~2024年1月14日(日) 【大会概要】 レギュラーシーズン(12チームによるホーム&アウェイ 2回戦総当りリーグ戦) 開催期間:2023年5月27日(土)~2023年12月10日(日) 1. 全22節が終了した時点で、勝点(勝利3点、引き分け1点、敗戦0点)の合計が多いチームから順に上位6チームと下位6チームのグループに分かれる。 2. 勝点が同一の場合は次の各号の順序により順位を決定する。 (1) リーグ戦の得失点差 (2) リーグ戦の総得点 (3) 当該クラブ間の対戦成績(イ:勝点、ロ:得失点差、ハ:総得点数) (4) 抽選 ファイナルシーズン(レギュラーシーズンの上位6チーム、下位6チームの2グループによる1回戦総当りのリーグ戦) 開催期間:2023年12月22日(金)~2024年1月14日(日) レギュラーシーズン終了後の勝点を持ち越し、全5節終了後に順位を決定する。 【年間順位決定方法】 ・レギュラーシーズン22節、ファイナルシーズン5節の全27節が終了した時点で、上位リーグのうち勝点の合計が多いチームを年間優勝チームとする。 ・上位6チームと下位6チームとの間で順位が入れ替わることはない。 引用:Fリーグ公式サイト 大会概要 |
■湘南ベルマーレフットサルクラブの全シーズン順位
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■ベルスポ
BELLMARE SPORTS。Fリーグ湘南ベルマーレの試合結果をはじめ、フットサルに関するコラムなどをスポーツ新聞風にお届け予定。
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